択一式定番問題第1回

本試験まで、残り僅かとなりました。今こそもう一度、基礎・基本に帰るときです。本日より7回シリーズで択一式の定番問題(1日30問)を掲載します。
設問は、すべて「誤り」の問題です。論点をチェックしてください。

第1回は、「労働基準法(21問)」と「労働安全衛生法(9問)」です。

●労働基準法
問1 均等待遇を定めた法3条では、労働者の国籍、信条、性別又は社会的身分を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをすることは禁止されている。

答1 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。「性別」は含まれていない。

問2 法4条が禁止する女性であることを理由とする賃金についての差別的取扱いには、女性を男性より有利に取扱う場合は含まれない。

答2 女性であることを理由とする賃金についての差別的取扱いには、不利に取扱う場合のみならず、有利に取扱う場合も含まれる。

問3 何人も、他の法律の定め如何にかかわらず、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

答3 何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

問4 労働基準法に定める「使用者」とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をする管理監督者以上の者をいう。

答4 労働基準法に定める「使用者」とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

問5 労働基準法でいう「労働者」とは、職業の種類を問わず事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われる者をいい、株式会社の取締役である者は労働者に該当することはない。

答5 業務執行権をもたない、法人の取締役が、工場長や部長等といった役職を兼務し、賃金を受け取っている場合などは、法9条に規定する労働者に該当することもある。

問6 船員法1条1項に規定する船員については労働基準法は適用されず、したがって、同法1条「労働条件の原則」、2条「労働条件の決定」等の労働憲章的部分も、当然適用されない。

答6 船員については、総則(法1条から11条まで)、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人についての適用除外(法116条2項)、罰則(法117条から119条まで、及び121条)の規定は適用される。

問7 使用者は、労働契約の不履行について、労働者に対し損害賠償を請求してはならない。

答7 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならないが、使用者が実際に損害を受けた場合、実損害額に応じて損害賠償を請求することは認められている。

問8 使用者は、労使協定をし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせることができる。

答8 たとえ労使協定をしたとしても、労働契約に附随して貯蓄(強制貯蓄)の契約をさせることはできない。

問9 使用者は、労働者が育児・介護休業法の規定によって育児休業又は介護休業をする期間及びその後30日間は、当該労働者を解雇してはならない。

答9 解雇が制限されるのは、「業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間」(通勤災害の場合は含まれない。)、「産前産後の女性が法65条の規定によって休業する期間及びその後30日間」である。

問10 産前産後の休業をしている期間及びその後30日間であっても、労働者の責に帰すべき事由がある場合には、原則として、その事由について労働基準監督署長の認定を受けた上で解雇することができる。

答10 解雇制限期間中は、たとえ労働者の責に帰すべき事由があっても、解雇することはできない。
【解雇制限の例外】
(1)天災事変等により事業の継続が不可能となった場合(要行政官庁の認定)、(2)打切補償を支払う場合

問11 平均賃金の計算においては、業務災害又は通勤災害により療養のために休業した期間、産前産後の女性が労働基準法の規定によって休業した期間、使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間、育児・介護休業法の規定によって育児休業又は介護休業をした期間及び試みの使用期間については、その日数及びその期間中の賃金を控除する。

答11 「通勤災害」により療養のために休業した期間については、その日数及びその期間中の賃金ともに、平均賃金を計算する際の期間及び賃金総額から控除できるとの規定はない。
【平均賃金に係る控除期間】
ギョウ(業務上傷病休業期間)・サン(産前産後休業期間)・シ(使用者責休業期間)・イク(育児・介護休業期間)・ココロ(試用期間)ミル

問12 法24条1項においては、賃金は、通貨で支払わなければならないと規定されているが、同項ただし書において、法令に別段の定めがある場合、労使協定がある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができると規定されている。

答12 賃金を通貨以外のもので支給することが認められているのは、法令若しくは「労働協約」に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合に限られている。労使協定を締結したとしても賃金を通貨以外のもので支払うことは認められない。

問13 法24条1項本文においては、賃金は、その全額を支払わなければならないと規定されているが、同項ただし書において、法令又は労働協約に別段の定めがある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができると規定されている。

答13 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないが、法令に別段の定めがある場合又は「労使協定」がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができると規定されている。

問14 法37条に定める割増賃金の基礎となる賃金(算定基礎賃金)はいわゆる通常の賃金であり、家族手当は算定基礎賃金に含めないことが原則であるから、家族数に関係なく一律に支給されている手当は、算定基礎賃金に含める必要はない。

答14 その家族数に関係なく一律に支給されている手当は家族手当とみなさないとされ、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならない。なお、実際の距離によらない「通勤手当」や住宅以外の要素に応じて支払われる「住宅手当」についても同様である。

問15 法41条2号に該当する監督又は管理の地位にある者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用除外となっていることから、使用者は、これらの者の時間外労働、休日労働又は深夜業に対して、法37条の規定による割増賃金を支払う必要はない。

答15 「監督又は管理の地位にある者」であっても、深夜業に関する規定は適用される。よって、「監督又は管理の地位にある者」であっても、深夜業に対する割増賃金は支払う必要がある。なお、高度プロフェッショナル制度の対象労働者については、労働時間、休憩、休日のほか、深夜の割増賃金に関する規定も適用されない。

問16 フレックスタイム制を採用する場合には、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねることとし、かつ、労使協定により、清算期間、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間、フレキシブルタイム(労働者がその選択により労働することができる時間帯)及びコアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)を定めなければならない。

答16 フレキシブルタイム及びコアタイムについては、定めることは義務づけられていない。なお、フレキシブルタイムに制限を設ける場合及びコアタイムを定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻を労使協定で決めておく必要がある。

問17 派遣中の労働者の年次有給休暇について、事業の正常な運営が妨げられるかどうかの判断は、派遣先の事業についてなされる。

答17 派遣中の労働者の年次有給休暇について、事業の正常な運営が妨げられるかどうかの判断は、「派遣元」の事業についてなされる。代替の労働者の派遣の可能性も含めて派遣元の事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断しなければならない。

問18 法36条6項1号においては、36協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出た場合であっても、坑内労働その他厚生労働省令で定める危険な業務又は健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならないとされている。

答18 労働時間の延長時間が1日2時間以内に制限されているのは、「坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務」であり、「危険な業務」については対象になっていない。

問19 生後満1年に達しない生児を育てる労働者は、法34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。

答19 設問の育児時間に関する規定は、「女性」のみが対象となる。

問20 使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

答20 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならないが、「産後1年を経過しない女性」が請求したとしても他の軽易な業務に転換させる必要はない。なお、この規定は、原則として妊娠中の女性が請求した業務に転換させる趣旨であるが、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではないこととされている。

問21 法106条に規定する法令等の周知義務に関し、使用者は、労働基準法及びこれに基づく命令並びに就業規則については、それらの要旨を周知すれば足り、全文の周知までは求められていない。

答21 「労働基準法及びこれに基づく命令」については、要旨を周知すればいいが、「就業規則」、労働基準法に基づく労使協定及び労使委員会の決議については、全文を周知しなければならない。

●労働安全衛生法
問22 事業者は、2人以上の安全管理者を選任する場合においては、そのうちの1人を除いては、その事業場に専属の者でない外部の労働安全コンサルタントを安全管理者として選任しても差し支えない。

答22 2人以上の安全管理者を選任する場合に、そのうち「1人については」その事業場に専属の者ではない、外部の労働安全コンサルタントを安全管理者として選任できることになっている。(衛生管理者についても同様の規定が置かれている。)

問23 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものがいるときは、まずその者を衛生委員会の委員に指名しなければならない。

答23 作業環境測定士の衛生委員会委員への指名は義務ではなく、「委員として指名することができる(任意的構成員)」とされている。(これに対して、産業医の衛生委員会委員への指名は義務(必須構成員)とされている。)

問24 製造業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、協議組織の設置及び運営を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならない。

答24 製造業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、「作業間の連絡及び調整を行うこと」に関する措置その他必要な措置を講じなければならない。

問25 事業者は、労働者の作業内容を変更したときは、労働安全衛生規則に定める事項について安全衛生教育を行わなければならないが、当該事項の全部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者であっても、その全部の事項についての安全衛生教育を省略することはできない。

答25 作業内容変更時の教育事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。なお、雇入れ時教育、特別教育、職長等教育についても同様の規定が置かれている。

問26 事業者が常時使用する労働者を雇い入れる場合に、当該労働者が医師による健康診断を受けた後6か月を経過しない者であって、当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、事業者は、当該健康診断の項目に相当する項目について雇入時の健康診断を省略することができる。

答26 「6か月」ではなく、「3か月」である。

問27 事業者は、事業に附属する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際及び1年以内ごとに1回、定期に、検便による健康診断を行わなければならない。

答27 給食の業務に従事する労働者に対する検便については、「1年以内ごとに1回定期に」行う必要はなく、雇入れ時と給食業務への配置換えの際に行えばよいとされている。

問28 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、毎年3月末までに、前年の健康診断の結果を取りまとめた所定の健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

答28 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断を行なったときは、「遅滞なく、」定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

問29 事業者は、原則として、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる一般の労働者に対しては、本人の申出の有無にかかわらず、面接指導を実施しなければならない。

答29 面談指導は、労働者の申出により行うものとされている。なお、新たな技術、商品又は役務の研究開発に従事する労働者については、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり100時間を超える労働者に対して、本人の申出の有無にかかわらず、面接指導を実施しなければならない。

問30 労働基準監督署長は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、政令で定めるものに従事した者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に、当該業務に係る基づき健康管理手帳を交付する。

答30 「労働基準監督署長は、」ではなく、「都道府県労働局長は、」である。