ステイホームワーク第18回(解答)

労働者災害補償保険法
●適用
問171 適用事業に使用される労働者であれば、出入国管理及び難民認定法による在留資格ないし就労資格を有しない外国人にも、労災保険法の適用がある。
答171 〇 不法滞在の外国人であっても、適用事業所に使用され、労働基準法の労働者に該当すれば、労災保険法が適用される。(法3条1項)
【コメント】
昨年の4月から外国人労働者の受入れ拡大がスタートしているため、外国人関連の問題は、他の科目も含めて出題される確率が高いと思います。

問172 独立行政法人国立印刷局、独立行政法人造幣局などの行政執行法人の職員には、労災保険法は適用されない。
答172 〇 なお、行政執行法人以外の独立行政法人の職員には、労災保険法は適用される。(独立行政法人通則法59条1項1号、平成13.2.22基発93号)
【コメント】
独立行政法人に対する労働法・社会保険法の適用関係は、それぞれの法律で異なりますが、出題されるのは、労災保険法です。(他の法律は気にしないでください。)

問173 国の直営事業、官公署の事業(労働基準法別表第1に掲げる事業を除く。)については、労災保険法は適用されない。
答173 〇 設問のとおり、労災保険法は、国の現業部門(国の直営事業)並びに国及び地方公共団体の非現業部門(非現業の官公署)には、適用されないこととされているが、地方公務員災害補償法により、地方公共団体の現業部門の常勤職員についても適用されないこととされている。したがって、官公署に関しては、「地方公共団体の現業部門の非常勤職員」のみが、労災保険法の適用を受けることとなる。(法3条2項)
【コメント】
条文からの出題です。実態的には、公務員の方で労災保険法が適用されるのは、「地方・現業・非常勤」です。

問174 派遣労働者に係る労災保険法の適用については、派遣先事業主の事業に係る保険関係により取り扱われる。
答174 × 労働者派遣事業に対する労災保険法の適用については、派遣元事業主の事業が適用事業とされる。(昭和61.6.3.基発383号)
【コメント】
労基法や安衛法などでは、「元か、先か、双方か」の論点がありますが、労災保険は「元」オンリー(元の保険を使う)です。

問175 2以上の事業に使用される労働者は、それぞれの事業において、労災保険法の適用を受ける。
答175 〇 複数の事業に就業する者は、それぞれの事業で適用労働者とされる。(法3条1項)
【コメント】
雇用保険法(その者が生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者となる)との比較論点です。

●業務災害(解釈例規)
問176 山頂付近での作業の現場監督者である労働者は、夕立のような異様な天候になったので、現場における作業を中止させ、自らも山頂の休憩小屋に退避しようとして、小屋近くまで来たときに落雷の直撃を受け死亡した。なお、当該山頂付近は、天候の変化が激しく雷の発生頻度が高い上、はげ山であったため落雷を退避する適当な場所がなかった。本件は、業務災害である。
答176 〇 天災地変それ自体としては業務と無関係な自然現象であるため、天災地変による災害の場合には、たとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的に業務起因性は認められないが、被災労働者の業務の性質や内容、作業条件や作業環境あるいは事業場施設の状況からみて、災害を被りやすい事情にある場合に、天災地変を契機として危険が現実化したものと認められる場合には、その災害について業務起因性を認めることができるとされている。(昭和36.3.13基収1844号)
【コメント】
天災地変の場合は、「災害を被りやすい事情」にあったかどうか(設問では、「当該山頂付近は、天候の変化が激しく雷の発生頻度が高い上、はげ山であったため落雷を退避する適当な場所がなかった」が判断のポイントになります。

問177 Y運送(株)の運転手であるHは、貨物を自動車に積載してG市内S小学校前を進行中、同校校庭で児童がバットで打った小石が自動車の前面ガラスを破って飛来し、左眼を負傷した。本件は、業務災害である。
答177 × 本件事故については、業務起因性が認められない。(昭和31.3.26基収822号)
【コメント】
問題文の場合は、業務(仕事)が直接の原因ではないからですね。事例問題で迷った場合は、その事故について「業務遂行性があるか(仕事中であるか)」かつ「業務起因性があるか(仕事が原因となっているか)」で素直に(深く考えずに)判断してください。

問178 トラックによる貨物の運送業務中に、国道上でトラックの荷台のシートがめくれたので、トラックを停車してトラック助手である労働者がシートをかけなおした。そのとき、強風が吹いて防寒帽が吹き飛ばされたので、当該労働者はとっさにその帽子を追って走り出したが、その際前方より疾走してきた自動車に跳ね飛ばされ死亡した。本件は、業務災害である。
答178 〇 作業の中断が生理的必要による場合や何らかの突発的原因による反射的行為によるものである場合は、業務に附随する行為とされ、その行為に起因して災害が発生した場合は、業務起因性を認めることができるとされている。(昭和25.5.8基収1006号)
【コメント】
上記にある「生理的行為」と「反射的行為」は、このような問題を判断するときのキーワードです。

問179 T国に出張したAは、出張中食事には気をつけていたのであるが、帰国後アミーバ性肝膿瘍に罹った。Aの勤務場所及び住居付近においては同種患者がなく、同病の潜伏期からみて、AがT国出張中に病原体の付着しているエビを食べたことによるものと医学的に推定される。本件は、業務災害である。
答179 〇 業務災害と認められる。出張中は、事業主の管理下にないものの、事業主の支配下にあり業務に従事しているので、積極的な私的行動や恣意的行為による事故等を除いて業務災害の対象となる。(昭和29.8.18基収2691号)
【コメント】
出張の場合は、仕事中のほかに「生活時間(食事中や宿泊中など)」も業務災害の対象とない得ることが特徴です。

問180 建設現場を巡回中の作業長である労働者が、作業に手抜きをしている大工を発見し、大工にこれを指摘し作業のやり直しを要求したところ、大工が反抗的態度をとったため口論となり、大工から不意に建築用資材を手にして打ってかかられ、負傷した。本件は、業務災害である。
答180 〇 他人の故意による災害は、一般には業務起因性はないが、災害の原因が業務にあって、業務と災害との間に因果関係が認められる場合は、業務起因性を認めることができるとされている。(昭和44.11.22基発644号)
【コメント】
ポイントは、「作業のやり直しを要求した」ことが事故(ケンカ)の原因(=業務起因性あり)となっているところですね。