「判例道場」第20回

【第19回解答】

使用者が労働者を新規に採用するにあたり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。

〔選択肢〕

① 内定期間 ② 雇止め ③ 試用期間 ④ 解雇

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「普通」
  • 解答根拠

最判平成2.6.5「神戸弘陵学園事件」

  • 事案概要

職員Xは、期間1年(1年間の勤務状態を見て本採用するか否かの判定をするという趣旨の有期労働契約)の講師として学校法人Aに採用されたが、Aは、他に理由を示すことなく、単に「1年間の契約期間満了」をもって職員Xとの契約を終了させ本採用しなかったため、Xがその無効を訴えた事案

  • 論点

試用期間目的で有期労働契約を締結することはできるか

  • 結論

できるが、単純に、期間満了=契約終了とはならない(使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間(※)ではなく、試用期間であると解するのが相当である。そして、試用期間付雇用契約の法的性質については、試用期間中の労働者に対する処遇の実情や試用期間満了時の本採用手続の実態等に照らしてこれを判断するほかないところ、試用期間中の労働者が試用期間の付いていない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、使用者の取扱いにも格段変わったところはなく、また、試用期間満了時に再雇用(すなわち本採用)に関する契約書作成の手続が採られていないような場合には、他に特段の事情が認められない限り、これを解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。)

※)「存続期間」とは…その満了をもって契約が終了するとされる期間のことをいう。

〔第20回問題〕

元来、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」(労働基準法2条1項)が、多数の労働者を使用する近代企業において、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の D としての性質を有するだけでなく、それが E 労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができる。

〔選択肢〕

D ① 職場規律 ② 労働契約 ③ 合意文書 ④ 社会的規範

E ① 合理的な ② 合法的な ③ 公序良俗に反しない ④ 適正な

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