「判例道場」第19回

【第18回解答】

労働基準法7条が、特に、労働者に対し労働時間中における公民としての権威の行使及び公の職務の執行を保障していることにかんがみるときは、公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に附する旨の就業規則の条項は、右労働基準法の規定の趣旨に反し、無効のものと解すべきである。

従って、所論のごとく公職に就任することが会社業務の遂行を著しく阻害する虞れのある場合においても、普通解雇に附するは格別、同条項を適用して従業員を懲戒解雇に附することは許されないものといわなければならない。

〔選択肢〕

① 普通解雇 ② 諭旨解雇 ③ 出勤停止 ④ 戒告処分

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「平易」
  • 解答根拠

昭和38.6.21「十和田観光電鉄事件」

  • 事案概要

従業員Xが市議会議員選挙に当選し、会社Aの承認を得ないまま市議会議員に就任したところ、「従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇とする旨の就業規則に該当する」として、会社Aが従業員Xを懲戒解雇したため、Xがその無効を訴えた事案

  • 論点

市議会議員に当選した従業員に対する懲戒解雇は有効か

  • 結論

無効(おもうに、懲戒解雇なるものは、普通解雇と異なり、譴責、減給、降職、出勤停止等とともに、企業秩序の違反に対し、使用者によって課せられる一種の制裁罰であると解するのが相当である。ところで、本件就業規則の前記条項は、従業員が単に公職に就任したため懲戒解雇するというのではなくして、使用者の承認を得ないで公職に就任したために懲戒解雇するという規定ではあるが、それは、公職の就任を、会社に対する届出事項とするにとどまらず、使用者の承認にかからしめ、しかもそれに違反した者に対しては制裁罰としての懲戒解雇を課するものである。しかし、労働基準法7条が、特に、労働者に対し労働時間中における公民としての権利の行使および公の職務の執行を保障していることにかんがみるときは、公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に附する旨の前記条項は、右労働基準法の規定の趣旨に反し、無効のものと解すべきである。従って、所論のごとく公職に就任することが会社業務の遂行を著しく阻害する虞れのある場合においても、普通解雇に附するは格別、同条項を適用して従業員を懲戒解雇に附することは、許されないものといわなければならない。)

〔第19回問題〕

使用者が労働者を新規に採用するにあたり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、 C であると解するのが相当である。

〔選択肢〕

① 内定期間 ② 雇止め ③ 試用期間 ④ 解雇

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