「判例道場」第16回

【第15回解答】

労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される。また、割増賃金の算定方法は、労働基準法37条等に具体的に定められているが、労働基準法37条は、労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるものと解され、使用者が、労働契約に基づき、労働基準法37条等に定められた方法以外の方法により算定される手当を時間外労働等に対する対価として支払うこと自体が直ちに同条に反するものではない。他方において、使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である。

〔選択肢〕

C ① 労働の対価を確保し ② 時間外労働等を抑制し ③ 労働者の生活の安定を図り ④ 労使関係の安定を図り

D ① 平均賃金 ② 通常の労働日の賃金 ③ 通常の労働時間の賃金 ④基準内賃金

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「普通」
  • 解答根拠

最判令和2.3.30「国際自動車事件」

  • 事案概要

Y社に雇用され勤務していたタクシー乗務員であるXらが「歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨を定める賃金規則上の定め」は無効であるとして、控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払を求めて訴えた事案

  • 論点

歩合給の計算にあたり控除される「割増金」の支払をもって、割増賃金の支払いがあったと認められるか

  • 結論

認められない(「割増金」として支払われる賃金のうち、どの部分が時間外労働等に対する対価に当たるかが明らかでない限り、割増賃金の支払いがあったとは認められない。)

〔第16回問題〕

採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが E の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。

〔選択肢〕

① 解約権留保 ② 労働契約 ③ 誓約書 ④ 解約権行使

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