「判例道場」第6回

【第5回解答】

賃金の過払が生じたときに、使用者がこれを精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から過払分を控除することについて、適正な賃金を支払うための手段たる相殺は、その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば、労働基準法第24条第1項の禁止するところではないと解するのが相当である。

〔選択肢〕

① 経済生活の安定 ② 最低賃金の保障 ③ 生活保障 ④ 不利益の補償

 

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「平易」
  • 解答根拠

最判昭和44.12.18「福島県教組事件」

  • 事案概要

勤務評定反対の争議行為として9月中に職場離脱した公立学校の教職員らが、9月分の給与に生じた過払給与を翌年3月分の給与から控除されたのに対し、この控除は労働基準法24条(賃金の全額払)に違反し無効であるとして控除分の支払を求めた事案

  • 論点

過払賃金の調整的相殺(払い過ぎた賃金を翌月以降の賃金から控除すること)は、「賃金全額払の原則」に反するか

  • 結論

反しない(ただし、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない)

【第6回問題】

労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、 B に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との C を図る必要が生ずるのが通常であり、労働者がこれを経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。

〔選択肢〕

B ① 事業の正常な運営 ② 労働者の生活 ③ 経営状況 ④ 職場規律の維持

C ① 互譲の手続 ② 事前の調整 ③ 労使協議 ④ 団体交渉

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