社会保険労務士試験「プチ講座」

 みなさん、こんにちは。本日から社会保険労務士試験「プチ講座」を開講いたします。
 第1回は、「労働基準法」の試験対策(前篇)についてお話ししたいと思います。
 労働基準法の問題の特徴としては、「判例」や「行政解釈」が多く出題されることが挙げられます。特に、総則、解雇、賃金、労働時間、就業規則、年次有給休暇といったところがその数も多く、重要(頻出)エリアになります。
 まず、「択一式」対策についてですが、「判例」も「行政解釈」もそのほとんどどがYES・NO論点の(単純に結論を変える)問題であるため、普段からしっかりと結論(とそれに伴う要件)を押さえておくことがポイントとなります。
 今年度の試験問題を見てみましょう。
・判例の問題例(問4・C)
 退職金は労働者の老後の生活のための大切な資金であり、労働者が見返りなくこれを放棄することは通常考えられないことであるから、労働者が退職金債権を放棄する旨の意思表示は、それが労働基準法第24条第1項の賃金全額払の原則に反し無効であるとするのが、最高裁判所の判例である。
(答)誤り。
 最高裁判所の判例によれば、「労働者が退職金債権を放棄する旨の意思表示は、労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在していたものということができるのであれば、賃金全額払の原則に反しない。」としている。(最判昭和48.1.19「シンガー・ソーイング・メシーン事件」)
 この問題については、キーワード(退職金債権の放棄(項目)、自由な意思(要件)、賃金全額払の原則に反しない(結論))をしっかり押さえておけば、解答可能な問題でした。
・行政解釈の問題例(問7・D)
 労働基準法第90条第2項は、就業規則の行政官庁への届出の際に、当該事業場の過半数労働組合、それがない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を記した書面を添付することを使用者に義務づけているが、過半数労働組合もしくは過半数代表者が故意に意見を表明しない場合又は意見書に署名もしくは記名押印をしない場合は、意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、これを受理するよう取り扱うものとされている。
(答)正しい。
 使用者が意見を聴いたと認め得るのに十分な手段を尽くしているにもかかわらず、労働者代表がその意見を表明することを故意に拒み、又は意見を記した書面の提出を拒み、若しくはその書面に署名ないし記名押印をしないことがある場合でも、意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、受理するよう取り扱うこととされている。(昭和23.10.30基発1575号)
 この問題についても(長文問題ですが・・・)、キーワード(就業規則の意見書添付(項目)、意見聴取の客観的証明(要件)、受理する(結論))をしっかり押さえておけば、解答可能な問題でした。
 判例や行政解釈については、試験対策上は、すべてを完璧に理解する必要はありません。特に判例については、難解な事件を取り扱ったものもあり、あくまでも「試験レベル」で押さえて行くことが大切です。
次回は、今回の続きとして、「選択式」対策についてお話ししたいと思います。

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