社会保険労務士試験「プチ講座」

 みなさん、こんにちは。今回は、労働基準法の「選択式」対策についてお話ししたいと思います。
 近年の「選択式」の問題は、「判例」が(ドッカリと)その中心に座っています。
 対策のポイントは、3つあります。
 1つ目は、試験に出題される判例(年々増えてはいますが、約50程度)について、事件の概要(争点と結論)を知っておくことです。空欄の前後の文章は、判旨の中でも「判決の決め手」となった部分であることが多いため、事件の概要を知っておくことが選択肢を適確に選ぶための大きなヒントになるからです。例を挙げてみましょう。
・問題例(平成22年度出題)
 「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に関する期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適正を評価・判断するためのものであるときは、右期間〔当該期間〕の満了により右労働契約〔当該労働契約〕が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間〔当該期間〕は契約の存続期間ではなく、【   】であると解するのが相当である。」とするのが最高裁判所の判例である。
(答)試用期間(最判平成2.6.5「神戸弘陵学園事件」
 この事件の概要は、次のようなものでした。
 職員Xは、期間1年(1年間の勤務状態を見て本採用するか否かの判定をするという趣旨の(試用期間としての意味をもつ)有期労働契約)の講師として学校法人Aに採用されたが、学校法人Aは、他に理由を示すことなく、単に「1年間の契約期間満了」をもって職員Xとの契約を終了させ本採用しなかったため、Xがその無効を訴えた。
 これに対して、最高裁判所は「試用目的の有期労働契約は、期間満了による契約の終了についての明確な合意が成立していなければ、その期間は試用期間と解釈され、期間満了により当然に契約が終了するということにはならない。」とした。
 2つ目は、「判旨に出てくる特有の言葉」にあらかじめ狙いを付けておくことです。例を挙げてみましょう。
・問題例(平成23年度出題)
 「年次有給休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を【   】として発生するのであって、年次有給休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』やこれに対する使用者の『承認』の観念を容れる余地はないものといわなければならない。」とするのが、最高裁判所の判例である。
(答)解除条件(最判昭和48.3.2「白石営林署事件」)
 「解除条件」とは、「その成就によって法律行為の効力が消滅することとなる条件」のことをいいます(上記の判旨においていえば、使用者の適法な時季変更権の行使が解除条件であり、その結果、時季指定権の効力が消滅することとなります)が、このような言葉は普段の生活で使うことはなく、条文や行政解釈などでも見かけないものです。
 3つ目は、文章の要点をしっかりと掴むことです。例を挙げてみましょう。
・問題例(平成27年度出題)
 最高裁判所は、海外旅行の添乗業務に従事する添乗員に労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外労働のみなし労働時間制が適用されるかが争点とされた事件において、次のように判示した。
 「本件添乗業務は、〔・・・中略・・・〕旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされているということができる。
 以上のような〔・・・中略・・・〕、本件添乗業務については、これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認めがたく、労働基準法第38条の2第1項にいう「【   】」に当たるとはいえないと解するのが相当である。」
(答)労働時間を算定し難いとき(最判平成26.1.24「阪急トラベルサポート事件」)
 この問題は、実際は1ページ半にわたる長文問題でしたが、書き出しに「労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外労働のみなし労働時間制」とあり、これに気が付けば途中を読むことなく短時間で容易に答えることができるものでした。
次回は、「労働安全衛生法」の試験対策についてお話ししたいと思います。

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