平成28年度社会保険労務士試験(選択式・労働法関係)講評

1 労働基準法及び労働安全衛生法(4点は得点可能)
(1)A、B(最判平成27.6.8)
予想された判例(専修大学事件)からの出題であり、判例特有の用語を問いかけたものでもなかったため、比較的戸惑うことなく解答できたかと思う。
(2)C(労働基準法第38条の4第1項第1号)
企画業務型裁量労働制の「対象業務」の定義に関する問いかけであった。条文を読み込んでいた方にとっては、平易な問題であったと思う。選択肢の中では、⑫が紛らわしいものとなっているが、「労使委員会」という用語は法律本則には登場しない。
(3)D(労働安全衛生法第10条第2項)
総括安全衛生管理者の「選任要件」についての問いかけであった。択一式の論点でもあり、平易な問題であったと思う。
(4)E(労働安全衛生法第66条の10第1項、労働安全衛生規則第52条の10)
ストレスチェックの実施者についての問いかけであった。重要改正事項の一つでもあり、予想どおりの出題であった。
2 労働者災害補償保険法(3点は得点可能)
(1)A(法第13条第3項)
療養補償給付は、療養の給付(現物給付)が原則であるが、療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令で定める場合には、療養の給付に代えて「療養の費用」を支給することができるとされている。学習上の基本事項である。
(2)B(法12条の2の2第2項)
相対的支給制限からの出題であった。故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて「療養に関する指示」に従わないことにより・・・というフレーズは、国民年金法や厚生年金保険法等にもあり、比較的良く目にするものである。学習量の差がストレートに出る問題かと思う。
(3)C、D、E(平成13.12.12基発第1063号)
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準からの出題であった。Cの「6か月間」はここでの基本事項なのでしっかり入れたいところである。DとEは、知識として記憶していた方は少なかったかと思う。
3 雇用保険法(3点は得点可能)
(1)A、B、C(法第1条)
目的条文からの出題であった。Aの「生活及び雇用の安定」は、失業時の生活補償や雇用継続の維持といったこの法律の趣旨からも容易に選ぶことができる。Bの「求職活動」はこの法律特有の用語でもあり、覚えているところかと思う。Cは、目的条文を読み込んでなかった方にとっては難しかったかと思う。
(2)D(法第58条2項)
移転費については、受給資格者等(受給資格者、特例受給資格者及び日雇受給資格者)が対象となり、また、家族の分についても支給対象とすることは基本論点である。⑩の受給資格者等及び同居の親族と迷った方もいるかもしれないが、もし仮にこれが正解肢となり得るのであれば、受給資格者等及び「その者の」同居の親族という表現でなければおかしい言葉になる。
(3)E(法第67条)
費用の負担は、選択式・択一式の基本論点であるが、その中でも細かいところ(広域延長給付)からの出題であった。学習量の差がそのまま出る問題かと思う。
4 労務管理その他の労働に関する一般常識(2点は得点可能)
(1)A、B、C(平成23年就労条件総合調査)
A、Bは難問である。ただし、A(8割)については、平成22年度の択一式で出題実績があり、Bの部分については、平成19年度の択一式で出題実績がある。
Cは、易しい。保険料率の一番高いものは、厚生年金保険料である。
(2)D(労働組合基礎調査)
Dは難問である。ただし、雇用労働者数という観点からすると、選択肢は、①の雇用動向調査か④の労働力調査に絞り込めるのではないかと思う。
(3)E(平成25年労働組合等に関する実態調査)
Eは超難問である。

コメントを残す